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バブアー私的アーカイヴス<br>イラストレーター綿谷寛さん

バブアー私的アーカイヴス
イラストレーター綿谷寛さん

数々のファッション誌や広告の第一線で活躍するファッション・イラストレーターの綿谷さん。これまでに何度もバブアーを着た男たちを描いてきました。ウェルドレッサーとしても知られる画伯が所有する歴代「バブアー」を披露していただき、当時の思い出とともにその魅力を語っていただきました。

一冊の本との出会いがロンドンへと駆り立てた

――綿谷さんがバブアーを知ったきっかけとは?

「80年ごろに出会った一冊の本で、バブアーを初めて目にしました。アラン・フラッサーの『男の服装学』という邦題が付けられた本(原題:Making the Man: The Insider's Guide to Buying Men’s Clothes)で、世界中のメンズショップ(紳士服店)を紹介する内容でした。そこで、ロンドンにあるコーディングスというショップが選ばれていて、写真でバブアーを紹介していたのです」

――初めてバブアーを手にしたのは、どこだったのでしょう?

「80年代の終わり頃、妻とイギリス旅行をしました。もちろん、コーディングスに足を運び、バブアーの実物に触れました。でも、こんなにたくさん売っているなら後でもいいかなぁと思ってしまい、少しだけ並んでいたグレンフェルを買ってしまったのです(笑)。帰国してしばらく経ち、やっぱりバブアーが欲しくなり、たまたま銀座松屋でちょっとしたアウトドアコーナーがあって、セージグリーンの“ビューフォート”を入手しました。たぶん90年頃ですね。しばらくは街着として頻繁に着ていましたが、その後は箪笥の肥やしになっていました」

カントリージェントルマンへの憧憬を抱いて

――バブアーを再び着用するようになったのは、どのようなきっかけがだったのですか?

「30代の終わりころ、ハンティングを始めるようになったことです。『そうだ、バブアーがあるじゃないか!』と思い立ち、ハンティングに出かけるときはいつもバブアーを着るようになりました。獲物はキジとカモです。トゲのある藪の中を歩き回ったりするのですが、“ビューフォート”がしっかり身体を守ってくれました。おかげで傷だらけになってしまいますが、バブアーのタフさを身をもって知りました」

――なるほど、現在ではファッションアイテムとして広く認知されているバブアーですが、本来のアウトドアウェアとしてバブアーが活躍したのですね。

「たまたまハンティングの手ほどきをしてくれる知人がいて、相棒となる猟犬もいたことが幸運でした。雑誌『メンズ・クラブ』の取材でイギリスに訪れたとき、アルフレッド・サージェント(紳士靴ブランド)の取材があったのです。そのとき、会長のリチャード・ウェッブさんから、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの仔犬を譲り受けました(冒頭の写真の犬は2代目の愛犬である、アメリカン・コッカー・スパニエル)。リチャードさん本人もハンティングやフィッシングのときには、ツイードジャケットの上にバブアーを重ねていました。バブアーはガレージの中に保管してあって、鏡の前で支度をするその姿がとてもかっこよかったのです。ファッションというよりも、プロダクトとしての強さがあるのがバブアーの魅力なんですよね」

――ハンティングでバブアー着ていた頃のエピソードをお聞かせください。

「ゲームポケットが付いているので、獲物はそこに入れました。バブアー特有のワックスの匂いと獣臭さが入り混じった独特の臭いがして、“これこそアングロサクソンの臭いだ。俺も西洋人になったぞ!”と、なんだか誇らしく思いましたね。勝手な妄想なんですけど(笑)。ハンティングが終わると車のトランクに入れて、保管はやっぱりガレージでした。獣臭いから、とてもじゃないけどクローゼットには入れておけないですから。しばらくすると大量にカビが生えてしまって、最初のバブアーは泣く泣く処分しました」

私物コレクションの中で唯一のノンワックス

――それでは、現在手元に残っているバブアーについて教えてください

「90年代初頭に手にした2着目のバブアーは、ベージュのステンカラーコートでした。大阪出張のとき立ち寄ったショップの店主から、“綿谷さんに見てもらいたいバブアーがあるから!”と勧められたのです。素材はワックスドではなく、ピーチスキンのように起毛した化繊で、着丈がかなり長いデザインでした。後にも先にも見たことがない、非常に珍しい一着です。当時は着丈が短いコートがトレンドだったので気後れしたのですが、“2年後には着丈が長いトレンドが来るから、絶対買っておいた方がいい!”と念押しされ、購入しました。でも、何年経っても全然そんなトレンドが来ないので、結局このコートも箪笥の肥やしになってしまったのです(笑)。でも、今ようやく着丈が長いのがトレンドになったので、また引っ張り出してもいいかなと」

――なるほど、こんなシンプルなステンカラーコートをバブアーが作っていたのですね。綿谷さんは他にもバブアーをお持ちなのだとか…

「この取材の(冒頭のポートレート)ために着用したのは、2000年頃に『Begin』がやっていたネイビー特集に影響されて買った“ビューフォート”です。やっぱり僕はトレンドという言葉に弱いのかなぁ(笑)。合わせたジーンズは、玉木さんがやっているセプティズ(三軒茶屋にあるアメカジショップ)で購入した“リーバイス”の501です。ベストは“ラルフ ローレン”で、シャツは“ブルックス ブラザーズ”のボタンダウンシャツ。春を意識してデニムを選びましたが、スーツにも合わせてもいいのもバブアーの魅力ですね」

昨冬にも活躍したバブアー×トキトのコラボ

「その次に買ったバブアーは、2010年代前半に発売された“トキト”(デザイナー吉田十紀人氏が手がけるファッションブランド)とのコラボによる、シューティングジャケットです。知人のショップで高倉健さんが取り置きしていたそうですが、何かの事情でキャンセルになってしまった1着を僕が買い取ったのです。バブアーって、何年かは箪笥の肥やしになっているんだけど、何かのきっかけでまた着たくなっちゃう。特にこのシューティングジャケットは、買った当初よりも歳を取った今の方が似合う気がするのです。つい最近まで、コーデュロイのパンツを合わせてよく着ていました」

冬のスーツスタイルに欠かせないトレンチコート

「今所有している中で一番新しいバブアーは、一昨年に買ったワックスドコットンのトレンチです。先程のシューティングジャケットと同じくらい活躍しました。トレンチはタイドアップしたスーツの上に着ていました。ハンティングをやめてしばらく経ちましたが、やっぱり冬になると、ジビエを食べに行きたくなるんです。とっておきのビストロに行くときには、やっぱりバブアーを着て出かけたいですね。だって、コートハンガーにバブアーがかかっていたら、すごくかっこいいなぁと思うから」

PROFILE
綿谷寛
1957年、東京生まれ。小学生の頃、兄が読んでいた『メンズクラブ』に出会い、ファッションに目覚める。セツ・モードセミナーを経て、1979年に『POPEYE』にてデビュー。以後、ファッション誌や企業の広告など幅広いフィールドで活動。主な画集として、『STYLE: 男のファッションはボクが描いてきた』(2018年:小学館)がある。

Photo : Fumihito Ishii Text & Edit : Takuro Kawase

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